士業の仕事は、依頼者から預かった情報を扱うことそのものと言っても過言ではありません。決算書や申告書、登記に必要な本人確認書類、給与や社会保険の情報、マイナンバー——事務所には、外に出てはいけない情報が日々集まってきます。だからこそ「情報管理」は、専門知識と並ぶ、事務所の土台になる部分です。

とはいえ、「セキュリティ」と聞くと、専門的で難しそう、コストがかかりそう、と身構えてしまう方も多いのではないでしょうか。実際には、まず押さえるべきポイントはそれほど多くありません。事故が起きやすい場面を知り、そこに手を打つ。この順番で考えれば、限られた人手でも無理なく整えられます。

この記事では、士業事務所が最初に知っておきたい情報セキュリティの考え方を、専門用語をできるだけ避けながら入門者向けに整理します。

この記事でわかること

  • 士業事務所に情報管理が強く求められる理由
  • メール誤送信やPPAPなど、事故が起きやすい典型的な場面
  • 事務所がまず整えるべき3つの対策と、顧問先に安心を示す意味

士業に情報管理が強く求められる理由

士業には、それぞれの資格法や職業倫理のもとで、依頼者の秘密を守る義務があります。守秘義務は、単なるマナーではなく、士業という仕事への信頼を支える根幹です。加えて、事務所が扱う情報の多くは、氏名・住所・口座番号・マイナンバーといった個人情報でもあります。個人情報を業務で扱う以上、その安全な管理は法律上も求められるところです。

しかも士業事務所は、一般企業と比べて「他人の情報」を大量に、しかも継続的に預かるという特徴があります。顧問先が増えるほど、事務所に集まる情報の量と種類も増えていきます。ひとたび漏えいが起きれば、影響を受けるのは事務所だけでなく、情報を預けた顧問先やその先の関係者にまで及びます。この「預かっている」という意識が、情報管理の出発点になります。

事故が起きやすい典型的な場面

情報の事故は、特別な攻撃だけで起きるわけではありません。むしろ、日々の業務のなかの「うっかり」から起きるケースが少なくありません。よくある場面を挙げてみます。

  • メールの誤送信:宛先の選び間違いや、Cc・Bccの取り違え。急いでいるときほど起こりがちで、送ってしまうと取り消せません。
  • パスワード付きZIP(PPAP):ファイルとパスワードを同じ経路のメールで送る方法は、安全対策として形骸化していると指摘されています。受け取る側の負担も大きく、見直しが進んでいます(脱PPAPガイド)。
  • 私物端末・私物クラウドの利用:自宅のPCやスマホ、個人契約のオンラインストレージに業務ファイルを置くと、事務所の管理が及ばなくなります。
  • 退職者・引き継ぎ:職員の退職時にアクセス権限を止め忘れる、持ち出したデータが残る、といった穴が生まれやすい場面です。

いずれも「悪意」ではなく「仕組みの不足」が原因です。裏を返せば、仕組みで防げる余地が大きい、ということでもあります。

まず整えるべき3つの対策

あれもこれもと手を広げると続きません。入門としては、次の3つに絞って考えると整理しやすくなります。

① 安全な受け渡しの経路をつくる 顧問先や依頼者とのファイルのやり取りに、決まった安全な方法を用意します。相手に負担をかけず、かつ暗号化された経路で送受信できることが理想です。相手が登録不要で書類を提出できる受け取りリンクのような仕組みがあると、ITに不慣れな依頼者にも案内しやすくなります。

② 誤送信を止める仕組みを入れる 人の注意力だけに頼らず、機械的なチェックで止められるようにします。宛先ドメインの制限や、個人情報が含まれるファイルの自動検知などがあれば、送る前に気づける機会が増えます。マイナンバーなどが含まれていないか、機械的に確認できると安心です。

③ 記録を残す 「いつ・誰に・何を渡したか」を後から確認できるようにしておきます。開封やダウンロードの状況、送受信の履歴を残しておけば、万一のときに事実を示せますし、日々の管理もしやすくなります。改竄されない形の監査ログがあるとより確かです。

この3つは、それぞれが独立した大掛かりな導入を必要とするものではありません。ひとつの仕組みでまとめて満たせると、運用の手間も抑えられます。

顧問先に「安心」を示す意味

情報管理は、事故を防ぐための守りの取り組みであると同時に、顧問先との信頼を築く攻めの材料でもあります。「この事務所は、預けた情報をきちんと守ってくれる」——そう感じてもらえることは、専門性と同じくらい、選ばれる理由になります。

近年は、顧問先の側でも情報管理への意識が高まっています。取引先から情報の取り扱いについて確認を求められる場面も増えており、士業事務所が安全な受け渡しの方法を用意していること自体が、顧問先の安心につながります。丁寧な情報管理は、他の事務所との違いを示す、静かで確かな差別化になります。

ForceDriveでの実現

こうした「安全な受け渡し・誤送信対策・記録」を、専用アプリなしのブラウザだけで一通り整えられるのが、法人向けセキュアファイル送受信サービスForceDriveです。相手が登録不要でアップロードできる受け取りリンクや、有効期限・ダウンロード回数の制限、宛先メールに届く6桁コードでの確認(そのメールにアクセスできることの確認であり、本人そのものを断定するものではありません)に対応し、顧問先とのやり取りを無理なく置き換えられます。

安全面では、アップロードした全ファイルを自動でウイルスチェックし、PPAPを自動で検知してブロックします。マイナンバーなどの個人情報が含まれる場合は機械的に検知して警告し、宛先ドメインの制限などで誤送信を止める仕組みも備えています。これらのチェックにあたってファイルの中身を外部の生成AIに読ませることはなく、国内・自社データセンターで運用しています。改竄検知に対応した監査ログはCSVで書き出せるため、受け渡しの証跡を残せます。なお、ウイルスチェックは既知の脅威を機械的に確認するもので、あらゆる脅威を完全に防ぐものではない点は押さえておきましょう。共有URLは送信者がいつものメールから手動で送る運用なので、システムが勝手にメールを送ることもありません。

まとめ

士業事務所の情報セキュリティは、難しく考えるより「事故が起きやすい場面に、仕組みで手を打つ」ことから始めるのが近道です。まずは、①安全な受け渡し ②誤送信対策 ③記録、の3点を押さえましょう。この3つが整えば、日々の不安がぐっと減り、顧問先に対しても「安心して任せられる事務所」という姿勢を示せます。

自事務所に合った進め方を相談したい場合は、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。まずは影響の大きい業務から、無理のない範囲で整えていきましょう。